【大学院入試の過去問分析】大阪大学大学院の受験者向け「有機化学対策」

【大学院入試の過去問分析】大阪大学大学院の受験者向け「有機化学対策」大学院入試対策

こんにちわ。sakuranokiiです。

大学院別の過去問分析シリーズ第3校目は大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻と、理学研究科化学専攻の大学院入試について分析しました。

各専攻の過去問5年分を分析した結果をもとに、全体の傾向・頻出問題・差がつくポイントを研究科ごとに解説します。

解説する科目は大学化学の主要3科目である有機化学・物理化学・無機化学の3つです。

本記事ではまず有機化学の分析結果を共有します。

本記事を読んで、有名大学の院卒という輝かしい学歴を手に入れる第一歩を踏み出しましょう!

工学研究科_全体の傾向

工学研究科_全体の傾向

まずは全体の傾向から知りたい!

初めに大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻の過去問分析結果から解説します。

まずは全体の傾向をざっくり掴んでおきましょう。

下図に大阪大学大学院の有機化学の各単元の出題割合をまとめました。

有機化学_工学_各単元の出題割合

様々な単元から出題されていますが、カルボニル・芳香族の反応性・反応機構記述・スペクトル解析に関する問題で約半分を占めています

また、基礎問題と応用問題の比率を見てみると、全体としては76%が基礎問題で24%が応用問題です。

つまり、阪大大学院工学研究科の院試の有機化学はほとんどが基礎問題だと分かります

教科書レベルの知識をしっかり身に付けておけば高得点が狙えますよ。

それでは次節から具体的な対策方法を説明します。

sakuranokii
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【大学院入試の過去問分析】化学専攻必見!有機化学の頻出問題を解説でも述べましたが、やはりカルボニル化合物・芳香族の反応性に関する問題は阪大大学院工学研究科でも頻出ですね。一方で、他大学で頻出のアルケンはあまり出題されないのが特徴的です。

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工学研究科_絶対に落とせない頻出問題

工学研究科_絶対に落とせない頻出問題

どんな問題が頻出なの?対策の仕方は?

各単元の頻出問題を下記にまとめました。

各単元の頻出問題

〇カルボニル

*求核アシル置換反応(特に縮合剤を用いたアミド合成が頻出)

*カルボニルの還元

〇芳香族の反応性

*芳香族求電子置換反応(特に位置選択性に関する問題が頻出)

*芳香族求核置換反応(特にザンドマイヤー反応が頻出)

〇反応機構記述

*アルドール反応・アルドール縮合の機構がよく出る

〇スペクトル解析

1H NMRと13C NMRチャートから化合物構造推定

*化合物の1H NMRおよび13C NMRの帰属問題

〇ペリ環状反応

*シグマトロピ―転移(特にコープ転移が頻出)

*ディールズアルダー反応

〇酸と塩基

*酸性度の序列(特に共鳴効果の影響が頻出)

*塩基性度の序列(特に含窒素複素環の塩基性が頻出)

〇高分子化学

*活性アルケン(スチレンなど)の重合

〇アルケン

*アルケンへの付加反応の位置・立体選択性(特にヒドロホウ素化-酸化)

〇シクロアルカン

*最安定な立体配座の記述(特に置換シクロヘキサン)

〇生体分子

*NAD+とNADHの反応性

〇置換・脱離反応の機構

*SN2反応(特にハロアルカンの立体反転)

これらの頻出問題の対策は大部分が前記事【大学院入試の過去問分析】化学専攻必見!有機化学の頻出問題を解説で紹介済みですので、ぜひご覧ください

未解説の問題について、下記に対策をまとめました。

酸と塩基

含窒素複素環の塩基性度の序列:窒素のローンペアが環状共役系の一部になっていると塩基性は低いこと(ピロリジン窒素>ピロール窒素)、s性の高い軌道にあるローンペアの方が塩基性が低いこと(sp3窒素>sp2窒素)を押さえておく

シクロアルカン

シクロヘキサンの最安定な立体配座:ひずみの大きい舟形ではなく椅子型が安定であること、置換基はエクアトリアル位にあるほうが立体ひずみが小さく安定であることを押さえておく

生体分子

NAD+とNADHの反応性:NAD+は酸化剤として脱水素反応を起こすこと、NADHは還元剤として水素化反応を起こすことを押さえておく。一見反応性が低そうだがNAD+は中性化、NADHは芳香族性の獲得が反応の駆動力となる。

スペクトル解析・ペリ環状反応・高分子化学に関しては差がつくポイントですので次節で詳しく解説します。

頻出問題は基礎問題が多いですので周りの受験生も当然対策済みです。

簡単な問題が答えられず差がつくことがないようにしっかり対策しておきましょう。

sakuranokii
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阪大大学院工学研究科は必須解答の化学Ⅰと選択解答の化学Ⅱに分かれます。化学Ⅱの方が問題は難しく、大学院レベルの知識を問う問題がたまに出てきます(開環メタセシス重合など)。

工学研究科_周りと差がつくポイントとは?

工学研究科_周りと差がつくポイントとは?

頻出問題は皆正解するからそれだけ押さえても合格することは難しいよね。他の受験者と差をつけるためにはどうしたらいいの?

他の受験者と差をつけるためには「応用問題を解けるようになる」「よく出題されるが周りがあまり対策していない単元を押さえておく」の2点が重要です。

この2点を踏まえて、さきほどの有機化学の各単元の出題割合の図をもう1度見てみましょう。

有機化学_工学_各単元の出題割合2

良く出題される上に応用問題の割合が高いのは「反応機構記述」「スペクトル解析」「ペリ環状反応」「高分子化学」ですね。

これらの単元に関しては幅広い知識と深い理解が必要であることが分かります。

特に、「スペクトル解析」と「高分子化学」は他大学ではあまり出題されないので対策が甘くなりがちです。

すなわち、差がつくポイントは下記です。

差がつくポイント

①スペクトル解析とペリ環状反応と高分子化学に関する幅広い知識と考察力があるか?

②反応機構を深く理解しているか?

これらの問いに「Yes」と答えられる受験生が合格します

どんな対策をすればいいのかを次節で見ていきましょう。

sakuranokii
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阪大大学院工学研究科の主な出題単元は「カルボニル」と「芳香族の反応性」で、平均以下ですが応用問題も出ますのでもちろんこれらの単元は重要です。本記事では差がつくポイントに入れなかったですが、他大学の過去問分析の記事で解説していますので興味がある方はご覧ください。

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工学研究科_周りと差をつけるためにやるべきこと

工学研究科_周りと差をつけるためにやるべきこと

差がつくポイントは分かったけど、具体的にどんな勉強をすればいいの?

周りの受験生と差をつけるためにどんな対策をすればいいのかを、実際の出題例を見ながら解説します。

差をつけるために勉強すべきこと

①スペクトル解析の対策

*各官能基に特徴的なピークを理解しておく。代表的な溶媒のNMRスペクトルを覚えるのがお勧め。

*カップリング定数(J値)の決定方法を理解しておく

*NMRで等価なピークとして現れる水素や炭素の組み合わせを判断できるようになる

*MassはBrやClの特徴的な同位体ピーク、IRはCO伸縮振動の位置を押さえておく

*具体的には下記が出題例あり

例)NMRチャートから芳香族やカルボニル化合物の構造推定およびNMRの帰属、アルケンのトランスおよびシスの関係にある水素間のJ値の違い、ある水素のJ値を隣接水素のJ値から推定、Massで臭素の同位体ピークあり→含臭素化合物と推定、IRでCO由来のピークあり→カルボニル化合物と推定

ペリ環状反応の対策

ペリ環状反応が進行するための条件(反応点の軌道の位相が一致する)を押さえておく

*遷移状態での軌道の位相図書けるようになっておく

*立体選択的な反応である理由も理解しておく

*具体的には下記が出題例あり

例)ディールズアルダー反応の遷移状態を軌道の位相図含めて図示、シグマトロピ―転移の遷移状態における位相図図示、シグマトロピ―転移が立体選択的に進行する理由、電子環状反応の遷移状態の位相図図示、電子環状反応でどの立体異性体が得られるか記述

高分子化学の対策

重合の反応形式とその機構を1通り覚える。特にラジカル重合の反応機構は有機化学ではあまり馴染みがないので差がつくポイント。

*ポリマーの立体化学の種類(イソタクチック・シンジオタクチック・アタクチック)とその特徴を押さえておく

*高分子化学といえども一般的な有機化学の知識で解ける問題が多いのであきらめない

*具体的には下記が出題例あり

例)ジイソシアナートとジオールの重付加(ポリウレタンの合成)、ビニルアルコールのラジカル重合、スチレンのアニオン重合、Boc保護グリシンの縮合重合、環状アルケンの開環メタセシス重合、ポリスチレンの立体化学、ポリウレタン合成時に水を添加すると発泡ポリウレタンが得られる理由

大学院生向けのレベルの高い教科書を読んで様々な反応機構を知る

*知らない反応の機構を考える際に最も有効なアプローチは「類似反応の機構からの推定」なので、多くの反応機構を知っておくと有利

*他にも「一番求核的な原子と求電子的な原子の結合形成から考える」「電荷を省略せずに書いて考える」「目的物から逆算する」が機構を考える上で有効。

*具体的には下記のような反応機構に関する出題例あり

例)立体選択的ヨードラクトン化反応の機構、カルボカチオン転移を伴うアルコールの脱水反応の機構、スチレンのAIBNを用いたラジカル重合の機構、DMAPと無水酢酸を用いたアルコールのアシル化の機構、電子不足アルケンの過酸化水素によるエポキシ化の機構、ベンザイン発生+分子内アルキル化の機構

差がつくポイントまで押さえておけば合格は目の前ですよ!

sakuranokii
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レベルの高い教科書としておススメなのは「ウォーレン有機化学」と「大学院有機化学」の2つですね。有機化学を専攻する大学院生なら必読の教科書ですよ!

工学研究科_まとめ

いかがでしたでしょうか?最後におススメの勉強手順を示します。

阪大大学院工学研究科受験者向けの有機化学おススメ勉強手順

Step 1:教科書を1通り読む&授業ノートの復習

Step 2:頻出問題を重点的に対策

Step 3:差がつくポイントを勉強(スペクトル解析と高分子化学は別途専門書で勉強すべし)

Step 4:カルボニルと芳香族の反応性、ペリ環状反応については教科書の章末問題を解く

Step 5:過去問演習(直近5年分)&復習

上記のステップに沿って勉強すれば、阪大大学院工学研究科の有機化学対策はばっちりですよ!

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