こんにちわ。sakuranokiiです。
博士課程の支援について徹底解説シリーズ第3弾は、ティーチングアシスタント(TA)について解説いたします。
TAは代表的な博士課程学生の経済的支援制度なので、聞いたことがある方も多いでしょう。
博士課程の学生はほぼ全員がお世話になる制度ですので、理解しておかないとまずいです。
本記事では、博士課程に進学した筆者の実体験を中心に、TAの具体的な仕事内容や給料について解説いたします。
さらに、最近いくつかの大学で導入され始めたティーチングフェロー(TF)についてもご紹介します。
博士課程の学生はもちろん、進学予定の学生にとっても有益な情報ですので、ぜひ読んでいってください!
・【文部科学省からの支援編】*特別研究員やリーディング大学院などを解説
・【文部科学省の新たな支援編】*新規インターンシップ制度の解説
・【民間・企業団体からの支援編】*多くの学生が応募可能な奨学金の一覧
ティーチングアシスタントの概要


まずはTAの概要が知りたい!目的は?TAになる方法は?
まず、ティーチングアシスタントとは何かを説明しましょう。
優秀な大学院学生に対し,教育的配慮の下に,学部学生等に対するチュータリング(助言)や実験,演習等の教育補助業務を行わせ,大学教育の充実と大学院学生のトレーニングの機会提供を図るとともに,これに対する手当ての支給により、大学院学生の処遇の改善の一助とすることを目的とした制度
文部科学省のHP 「ティーチングアシスタント(TA)について」より
簡単に言うと、大学院生の教育および経済的支援、そして、大学教育の充実化を目的に、(主に博士課程の)大学院生に授業のサポートを行わせる制度です。
特に経済的支援の意味合いは強く、最近では優秀な学生が経済的理由で博士課程への進学を断念することを防ぐ上で、TAの存在は重要です、
応募方法等のガイドラインは大学ごとに決定されるので、詳しくは大学HPにアクセスしましょう。
1例として筆者の場合を説明します。
①説明会への参加
事前にTAの心構えや注意事項、応募方法等について説明される。
②応募
特に履歴書等は必要なく、採用試験もなし。簡単な書類を送るのみ。
修士は2年生の希望者のみ(ただし参加は強く推奨されてたし、大部分は参加する)。
博士課程の場合は必修科目の位置づけで全員参加。
③担当授業の決定
担当したい授業は自分で選択可能。
ただし、人数配分の都合上、第1希望になるとは限らない……
④授業担当教員と打ち合わせ
細かい仕事内容については授業の担当教員と事前に個別相談し役割を把握。
➄TA業務スタート
事前打ち合わせ通り行動。何か問題があったら担当教員と都度相談。
TAが教員の代わりに授業を仕切ったり、学生の成績評価に携わることはありません。あくまでサポートが仕事です。
ただし、お金をもらうということは学生の身分であっても責任が伴います。業務には真摯に取り組みましょう。

大部分の人は自分の研究室の教員が担当している授業のTAになってました。その方が気が楽なので。その結果、普通のアルバイトとは違って指導教員の目があるのでTA業務は手が抜けません(笑)。教育の意味もありますしね。
ティーチングアシスタントの業務内容と給料


TAは具体的にどんな仕事をするの?給料はいいの?
TAの具体的な業務内容について、筆者の実体験を紹介します。
☆修士2年時
○実験実習のサポート
・業務内容:実験手順の説明、困っている学生にアドバイス、学生の質問に対する対応、一部の実験操作の補助、考察すべきポイントの説明、実験レポートのチェックなど
・勤務時間と期間:担当実験のみに参加。週1か2回で半日拘束。3ヶ月ほど担当。
☆博士課程時
○講義のサポート
・業務内容:教科書のある1章だけを10分程に要約し解説、教員が作成したテストの解答解説、テスト中の試験監督、テストの採点など
・勤務時間と期間:担当の章のみ参加。週1で授業1コマ。半年に1度だけ担当。
○長期間にわたるグループ演習の指導
・業務内容:学生グループが課題に取り組む際の資料や場所の準備、課題解決の方向性の修正、学生からの質問対応、プレゼン対策など
・勤務時間と期間:週1回ほど半日拘束。プレゼン直前は週2,3回ほど。3ヶ月ほど担当。
グループ演習の指導は特に大変でした。拘束時間が長い上に、ほとんどTA任せの授業なので。
ただし、自分が面倒を見たグループのプレゼンがうまく行ったときはとてもやりがいを感じます。
教育者という仕事の大変さと楽しさを味わえた想い出深い経験ですね。
また、給料については下記のとおりです。
・修士2年時:時給1200円
・博士課程時:時給1300円
特にどの授業だからと言って時給に変化はありません。
塾講師のアルバイトと同じぐらいですね。大体月3,4万円の収入になっていました。
ただ残念ながら、授業の準備時間等に対する時間外勤務の手当はなかったですね(虚偽の申告対策等の管理が大変だからでしょうか?)
博士課程のTAの1例として、参考にしていただければ思います。

TAの給料は大学によって様々ですが、1200~1300円が平均の印象です。1コマ(90分)で3000円も出て、かつ、時間外勤務に対しても時給が発生する太っ腹な大学もありますね。
ティーチングアシスタントのメリット・デメリット


TAをするメリットは何?デメリットもあるの?
筆者の実体験および様々な大学のアンケート調査の結果を参考に、TAをするメリットとデメリットを下記にまとめました。
・コミュニケーション能力と表現力の向上
・教えることで知識の整理ができる
・給料が学費、生活費の足しになる
・指導力の向上
・プレゼンスキルの向上
・得られた知識や経験が自身の研究に役立つ
・職務履歴として就活のアピールポイントになる
・人脈が広がる
・研究の時間がとられる
・時間外勤務に手当が出ないと実質低賃金
・態度の悪い学生がいると指導が大変
メリットとして挙げた「コミュニケーション能力の向上」は経験者なら頷けるのではないでしょうか?
TAの業務中には「自分より知識も経験も少ない人に物事を伝えるためにはどうしたらよいのか」と頭をひねる機会が良くあります。
社会に出ると似たような場面は何度も訪れますよ(笑)。
TAの経験は社会で生きる上で重要なコミュニケーション能力を養う良いスタートになると思いますよ。
一方で、主なデメリットとしては「研究の時間がとられる」ことが挙げられます。
TAは実務中はもちろん、授業の準備にも結構な時間を費やす場合があります。
正直なところ、TA業務に時間がとられるのは仕方ないので受け入れるしかありませんね。
研究が止まる一方で、お金はもらえますから我慢しましょう(笑)。
それに、メリットの例に挙げたように、TAでの仕事を通じて学んだ知識や経験が自分の研究に役立つこともありますよ。
TAをすることにはデメリットもありますが、メリットの方が多いと思います。
博士課程の学生は経済的支援を受ける意味でも積極的に応募しましょう!

教える側に回ることで気づくことは多いです。例えば、人に物事を理解させる難しさは皆痛感することでしょう。その気付きもTAを学生にやらせる1つの狙いです。特に博士課程の学生は後輩の指導など人の教育をする機会がどんどん増えていきます。そのときにTAの経験が役立つと思いますよ。
ティーチングフェローとは?


最近耳にするティーチングフェロー(TF)っていったい何?TAとどう違うの?
ティーチングフェローとは何かについて下記にまとめました。
○目的
・TAの目的に加え、より高度な教育能力を持った学生を育成すること
○募集条件
・基本的に博士課程の学生のみ応募可能
・TAとしての業務経験が必要
○業務内容
・補助的な講義資料や演習問題などの教材を自ら企画し作成
・実験や実習の実技指導
・担当教員に変わりTAの指導も適宜行う
・TFと言えど、シラバスの作成やテストの作成、担当教員の代わりに授業をすることはない
○給料
・時給がTAより数百円高額(例:大阪大学のTFは時給1600円)
ティーチングアシスタントとの最大の違いは、業務内容を自分で立案することですね。
ティーチングアシスタントは基本的に担当教員の指導通りに動くだけですが、ティーチングフェローは自ら授業のアイデアを提案し、実際に実行することが求められます。
学生の教育に対する強い熱意とTAよりも高度な指導力が求められる業務です。
博士課程の学生の中で、将来は大学教員になりたい方は授業の運営経験を積む貴重な体験になるので、チャレンジしてみてはいかがでしょうか?

筆者の周りでティーチングフェロー経験者は見たことがありません。おそらく応募する人はかなり珍しいのではないでしょうか?だとすると、TFの経験をしておけば就活のアピールポイントに使えそうですね。博士課程の方は周りの学生と差をつけるチャンスかもしれません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?本記事をまとめると下図のようになります。

ティーチングアシスタント・ティーチングフェローがどんな仕事なのかイメージできましたか?
より細かい情報はご自身の研究科のHPで確認してくださいね。
これらの制度は、お金をもらいながらスキルアップができる上に人脈も広がるため、学生にメリットが多い制度です。
特に博士課程の学生なら、やらない理由は見当たりませんよ。
ぜひティーチングアシスタント制度を活用して、研究室生活を豊かにしましょう!
以上、ご参考になれば幸いです。
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