こんにちわ。sakuranokiiです。
博士課程に興味がある大学生の方はこんな疑問をお持ちではないでしょうか?

博士になったら就職先は研究職に限定される?
博士のキャリアパスってやっぱり狭いのかな?
博士課程の学生は基本的に就職先として研究職を目指します。
博士課程で培かった専門知識や研究遂行力を直接活かすことができるので当然ですね。
企業側も博士課程卒の学生は基本的に研究職として採用しています。
ですが、世の中には研究職以外にも本当にたくさんの仕事があります。
研究職以外にも博士に向いている仕事が存在するとは思いませんか?
実際、筆者が今まで博士課程の就職事情を色々調べてきた中で、博士の非研究職としてのキャリアパスが最近注目されているように感じました。
博士向けの非研究職の仕事を知っておけば「就職先の選択肢が増えるので就活が有利」「企業の研究が肌に合わなかったときに転職先の候補にできる」などのメリットがあります。
また、博士課程に進学したものの「自分に研究は合わない」と感じた人なら、非研究職としての進路は必ず知っておくべきでしょう。
というわけで、本記事の内容は下記です。
●テーマ
研究職以外で博士におすすめの就職先を紹介する
●主旨
博士向けの非研究職の仕事を知ってもらうことでキャリアの選択肢を増やし、自分が納得する進路を見つけてほしい
●読んでほしい人
現役の博士課程の学生(特に研究に疲れてきた学生)、博士課程に興味がある大学生
コンサルタント


博士がなれる非研究職で一番就きやすい職って何?
まずは、博士におすすめの非研究職の中で、筆者の思う一番就きやすい職「コンサルタント」についてご紹介します。
●業務内容
・顧客企業が抱える課題を明らかにし、その課題を解決するための方法を提案する仕事
・企業の経営・成長課題を解決する経営コンサル、財務・吸収合併課題を解決する財務コンサル、人材育成課題を解決する人事コンサルが代表例
●求められる知識・スキル
・担当する業界における高度な専門知識を始め、顧客の課題を明らかにするための情報解析力、課題解決方法を考えるための論理的思考力、解決方法を顧客に提案する上でのコミュニケーション能力など多様なスキルが求められる
・成果主義の職業なので、期限内に顧客が期待する解決策を何としてでも見つけるという高いプロ意識も必要
・取得必須の資格はないが、中小企業診断士や簿記、公認会計士などの資格があると有利
●待遇
・コンサルタントの種類や職階によって異なるが、一般的に高給な職種として有名
・代表的な日本のコンサルタント会社の年収(四季報より)↓
野村総合研究所:1225万円、シグマクシス:1169万円、ベイカレントコンサルティング:1101万円、ドリームインキュベータ:976万円、山田コンサルティンググループ:803万円、タナベ経営:691万円、リンクアンドモチベーション:590万円
コンサルタント業務で必要な「ある分野の専門知識」「情報解析力」「論理的思考力」「コミュニケーション能力」は全て博士号を取得する過程で鍛えられる能力です。
よって、博士号取得者は皆コンサルタントとしてのポテンシャルを持っているので、非研究職の中でコンサルタントは選びやすい職種と言えます。
特に博士におススメなのは「技術コンサルタント」ですね。
技術コンサルタントは建築や機械、ITといったある特定の技術分野に関して課題解決策の提案を行う職種で、博士課程で培った専門知識を活かしやすい職種です。
それ以外にもコンサルタントの種類は数多くありますので、こちらのリンクを参考にして、自分がやれそうなコンサルタント業務がないか一度見てみると良いですよ。

筆者が大学で非常勤講師をしていた際に、同じく非常勤講師を担当されていた博士の方の本業がコンサルタントでした。個人で開業されており、時間を自由に使って仕事をされている姿は見ていて憧れましたね。
ベンチャーキャピタリスト


最近話題になっている博士向けの非研究職ってないの?
先日の日経新聞で「ベンチャーキャピタル(VC)が理系博士の採用を拡充」という見出しの記事が出ていました。
VCとはベンチャー企業に出資する投資会社のことです。
日経新聞の記事によると、主要なVCが博士人材をキャピタリストとして欲しているそうです。
ベンチャーキャピタリストとは下記のような職業です。
●業務内容
・有望な投資先ベンチャー企業の選定から始まり、投資戦略の立案と投資の実行、投資後の成長のサポートまで行う
・出資を行うための資金源の確保も行う
●求められる知識・スキル
・有望企業とつながるための行動力、有望企業を見つけるための業界の知識やファイナンスの知識、会社経営者に助言するためのコミュニケーション能力と課題解決力が求められる
・起業家として会社経営の経験があればベスト
●待遇
・利益率の高い金融系業種なので平均より高給な職種
・代表的な日本のVCの年収(四季報より)↓
ジャフコグループ:1220万円、日本アジア投資:957万円、NECキャピタルソリューション:752万円
昨今のVCは人工知能やロボット、環境エネルギーといった先端科学技術を扱う分野のベンチャー企業への投資に積極的です。
そこで、有望な技術開発型企業を目利きできる人材として、VCは注目分野の高度な専門知識を有する理系博士の採用意欲が増しています。
特に大学発ベンチャー企業に投資する際には、最先端技術に関する知識のみならず、大学教員と対等に議論できるスキルが求められるため、博士人材の需要は高いです。
ベンチャーキャピタリストはファイナンスの知識も必要であるため、理系出身者からすると選びにくい職種かもしれませんが、入社後の研修やOJTを通じてフォローされるので、過度に心配しなくてもOKかと思います。
実際、欧米では技術系のVCに理系博士は大勢いるらしいですよ。
ベンチャーキャピタルとして投資先を選定する仕事はいわば、面白い研究テーマのシーズを探し当てる仕事と言えると思います。
博士号を取得した人なら誰しもが新しい研究テーマの考案に苦労し、そして、乗り越えた経験があります。
研究職とは大きく畑違いに見えるキャピタリストですが、専門知識も活かせるし、意外に博士課程の経験を活かしやすい仕事ではないでないかと筆者は考えています。
就職先の選択肢の1つとして考えてみても良いのではないでしょうか?

「博士課程まで進学して研究職以外の仕事なんて……」と思うかもしれませんが、今は個の時代ですので、他人が歩まないキャリアを経験することには価値があります。博士だけでも珍しいのに、非研究職の博士となると非常に希少価値の高い人材ですよ。
MSL(メディカル・サイエンス・リエゾン)


他にも最近注目されている博士向け非研究職ってある?
医薬分野を専門とする博士なら「MSL(メディカル・サイエンス・リエゾン)」が最近注目されている職種です。
MSLとは下記のような職業です。
●業務内容
・高度な専門知識と収集した情報をもとに、医師など医療分野の専門家に対して医学、薬学、科学に関する最新情報の提供を行う
・特に医療分野の専門家のマネジメントと臨床研究支援が重要な業務
・他にも自社の開発部門と協働し自社医薬品の臨床試験支援及びその論文化や学会発表も行う
●求められる知識・スキル
・特定分野の高度な専門知識や経験、専門外の人にも分かり易く情報提供するためのコミュニケーション能力、専門家や学会を通じて情報収集および情報整理するための行動力と科学的思考力
・論文調査や海外顧客対応などで何かと英語力も求められる
●待遇
・MSLは主に製薬企業で導入されているため一般的に高給な職種
・MSLの採用を実施している代表的な日本企業の年収(四季報より)↓
中外製薬:1100万円、武田薬品:1076万円、アステラス製薬:1051万円、エーザイ:1042万円、小野薬品工業:937万円、協和キリン:877万円
近年、医療現場においては販促目的の情報交換よりも、最新の有益な医療情報を提供する営業が重視されており、医薬品業界を始めMSLのニーズは高まっています。
MSLは医療の専門家と科学的な議論をする必要がある職種なので、高度な専門知識と科学的思考力が重要視されます。
そのため、募集条件に修士以上の学位が明記されている場合が多いです。
博士の学位を有していれば、高い専門性も科学的思考力も有する人材であることが明白なので、博士はMSLに向いています。
さらに、博士は学生時代から英語文献や学会、専門家(大学教授など)を通じた情報のインプット、そして、アウトプットにも慣れっこです。
つまり、MSLに博士人材はうってつけなのです。
自分1人の研究にとどまらず、様々な研究のサポートを通じて幅広く医療業界に貢献したい博士の方は、MSLへの就職を考えてみてはいかがでしょうか?

MSLはまだ新しいキャリアパスのため、様々なバックグラウンドの方がいるそうです。企業の職種の中ではアカデミックな要素が強い仕事内容ですので、非研究職の中でも博士がとっつきやすい仕事ではないかと思います。
その他の非研究職


他にはどんな非研究職が博士におススメなの?
その他のおススメの非研究職を一挙ご紹介いたします。
●業務内容
・医薬関係者に対して、医薬品の効果や副作用などのデータを適切に情報提供するとともに、医療現場からの情報を社内へフィードバックすることが仕事
・MSLと違って情報提供のみならず販促も行う
●お勧め理由
・MSLと同様に高度な医療知識が求められるため博士向け
・営業の仕事なのでコミュニケーション能力に自信がある博士に特に向いている
●業務内容
・企業の知的財産(主に特許・商標など)の管理が仕事
・例えば新技術の特許申請や自社に有利な特許戦略の立案、他社特許の調査と分析など
●お勧め理由
・技術の中身が分かる人でないと知的財産管理は難しいので理系博士に向いている
・特許申請や他社特許の分析は博士課程時代の論文執筆や文献調査に近い部分があるため博士にはやりやすい仕事
●業務内容
・科学に関連する物事を解説する記事を作成することが仕事
・複雑な事象や難解な専門用語を一般向けに分かり易くかつ面白く解説し、科学に興味を持ってもらうことが主な目的
●お勧め理由
・理系博士なら少なくとも自分の専門分野に関する解説記事は十分書くことができる
・科学が好きな理系博士にとっては自分の好きなことをそのまま仕事にできる
●業務内容
・国会で決められた法律や予算に基づいて、中央省庁で様々な国の課題を解決する
●お勧め理由
・難関の採用試験を突破する上で博士課程で身に付けた学力が役に立つ
・国家の運営を担う重要な仕事なので高度な専門知識を有する博士は重宝される
●業務内容
・独創的なアイディアや新しい技術をもとに自ら事業を起こし社会貢献する
・事業のための資金調達から人材確保、顧客獲得まで仕事は多種多様
●お勧め理由
・博士は自分のやりたいことに主体的に取り組むのが好きな人が多いので、起業家のように自分のやりたい事業を自分で興すのは性に合う
・博士課程時代に培った高度な専門知識はもちろん、論理的思考力や粘り強さも事業を進める上で役立つ

今だったらYouTuberもありではないでしょうか。高い専門性があった方が差別化ができてウケる仕事だと思いますので。修了していきなり本業として開始するのはハードルが高いですが、サラリーマンをやりながらの副業なら気楽にできるのでおすすめですね。
まとめ
いかがでしたでしょうか?本記事の内容をまとめると下記のとおりです。
●博士が一番就きやすい非研究職は「コンサルタント」で特に技術コンサルタントがおすすめ
●最近話題の理系博士向け非研究職は「ベンチャーキャピタリスト」
●医薬系博士なら「MSL」がおすすめの非研究職
●その他にもMRや知的財産担当、サイエンスライターなどもおすすめの非研究職
博士の非研究職というキャリアパスが注目されていることを筆者は良い兆候だと考えています。
今の日本は「博士課程に進学すると就職が難しくなる」というイメージが根強く残っています。
その要因の1つに、博士の進路の選択肢が専門分野の研究職にほぼ限定されてしまっていることが挙げられるかと思います。
なので、研究職と非研究職の両方の進路が一般的になれば、博士の就職への悪い印象はなくなるでしょう。
むしろ、博士課程に進学することで進路の選択肢が広がるという認識に変わる可能性もあります。
本記事を読んだ情報感度の高い博士課程の方は、進路の選択肢に非研究職も考えてみませんか?
様々なキャリアを考えた方が、自分が本当に納得のいく進路は見つかりやすいですよ。
以上、ご参考になれば幸いです。
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