こんにちわ。sakuranokiiです。
博士課程に対してこのようなイメージを持たれている方は多いのではないでしょうか?
博士課程へ進学すると人生終了する・・・
なぜならまともな就職先に就けないからだ!
博士課程へ進学すると就職が難しいから人生終了するとか、博士課程は人生の墓場であるとか、たまに耳にします。
はてして本当にそうなのでしょうか?
本記事では、博士課程修了者は実際にどんな進路を歩むのか、国の調査結果を解説します。
さらに、博士号を取得した筆者が考える、博士課程で人生終了しないためにできることをお教えします。
本記事は、博士課程進学に悩まれている方や博士課程の就職事情について知りたい方のお役に立てると思いますよ。
博士と修士の就職率の違い
まずは、博士課程と修士課程の就職率の違いから見ていきましょう。
課程 | 修了者数 | 就職者数 | 就職率 |
---|---|---|---|
修士課程 | 73813 | 57467 | 77.9% |
博士課程 | 15522 | 10832 | 69.8% |
修士と博士の就職率の差は約8%と思ったより大差ではないと思います。
しかし、上記の就職者数には有期雇用労働者、つまり、非正規社員も含まれています。
大学院まで出たならもちろん正社員になりたいですし、その割合が知りたいですよね。
先ほどのテーブルに正社員率含めいくつかデータを追加しました。
課程 | 修了者数 | 就職者数 | 就職率 | 非正規社員率 | 正社員率 | 非正規のうちPDの割合 |
---|---|---|---|---|---|---|
修士課程 | 73813 | 57467 | 77.9% | 2.5% | 75.4% | – |
博士課程 | 15522 | 10832 | 69.8% | 15.5% | 54.3% | 48.9% |
正社員になった割合で比較すると修士と博士で20%以上の大きな差が付きました。
博士は非正規社員の割合が修士に比べ高く、その内訳の約半数はポストドクターです。
博士号取得後、大学教員等になるまでの間、ポストドクターとして修業する博士が多く存在するため、非正規社員の割合が高いのでしょう。
上記データを見ると、博士課程修了者のうち約半数しか安定雇用を得ていないため、博士課程に進学すると人生終了と囁かれるのも無理はないかもしれません……
博士課程修了後、就職していない残り3割の方がどうなったのかも個人的に気になりました。文部科学省発行の「令和2年度学校基本調査(確定値)の公表について」によると、1年未満の非正規社員や進学・就職準備中の者、家事手伝いの者が2割以上いるようです。知りたくなかった情報ですね……
理系博士に絞ると?
まだ希望を捨ててはいけませんよ(笑)。
博士課程修了者のメインはもちろん理系で、約8割がそうです。
理系博士に絞ると就職率、正社員はどうなるのか検証してみましょう。
課程 | 修了者数 | 就職者数 | 就職率 | 非正規社員率 | 正社員率 | 非正規のうちPDの割合 |
---|---|---|---|---|---|---|
修士課程 | 73813 | 57467 | 77.9% | 2.5% | 75.4% | – |
博士課程 | 15522 | 10832 | 69.8% | 15.5% | 54.3% | 48.9% |
理系博士課程 | 11753 | 8800 | 74.9% | 15.2% | 59.7% | 51.2% |
理系博士に絞ると就職率は約75%と修士と近いレベルになり、正社員率も約6割に上がります。
さらに、学科ごとに細かく見てみましょう。
平均正社員率(59.7%)以上の学科をまとめると下記のようになります。
課程 | 修了者数 | 就職者数 | 就職率 | 非正規社員率 | 正社員率 | 非正規のうちPDの割合 |
---|---|---|---|---|---|---|
修士課程 | 73813 | 57467 | 77.9% | 2.5% | 75.4% | – |
博士課程 | 15522 | 10832 | 69.8% | 15.5% | 54.3% | 48.9% |
理系博士課程 | 11753 | 8800 | 74.9% | 15.2% | 59.7% | 51.2% |
薬学 | 522 | 456 | 87.4% | 14.8% | 72.6% | 26.0% |
医学 | 3651 | 3025 | 82.9% | 13.6% | 69.3% | 25.2% |
電気通信工学 | 486 | 363 | 74.7% | 12.4% | 62.3% | 58.3% |
機械工学 | 218 | 171 | 78.4% | 17.9% | 60.5% | 64.1% |
薬学、医学、一部の工学系学科は平均越えの正社員率でした。
特に薬学博士は就職率、正社員率ともにかなり高いです。
製薬会社が博士採用に積極的なこととつながっていますね(過去記事参照:【博士の就活】博士におススメの業界)。
一方で、理学と農学はどの学科も平均以下で、最大でも農業工学の53.3%ですね。
特に理学系の正社員率は平均4割と他の理系学科に比べて一番低かったです。
理学博士で優秀な方がたくさんいることはもちろん知っているので誤解なきように。理学博士は非正規の割合が約25%と非常に高く、その8割以上はポストドクターです。利益重視の企業研究よりも純粋な基礎研究に打ち込むのが好きな方が多いのでしょう。
博士が就く職種
次に、博士課程修了者がどのような職業に就いているのか調査してみました。
予想通り、就職した人のうち9割以上は専門的・技術的職業に従事しています。
その内訳について、就職割合の高い順に5つご紹介いたします。
職種 | 人数 | 就職者のうちの割合 |
---|---|---|
医師・歯科医師 | 2616 | 24.2% |
研究者 | 2428 | 22.4% |
大学教員 | 2404 | 22.2% |
製造技術者(開発系) | 776 | 7.2% |
情報処理・通信技術者 | 254 | 2.3% |
1番多いのは医師・歯科医師ですね。
医学博士の数は他の専攻に比べて非常に多いので納得です。
2番目と3番目はほぼ同率で研究者と大学教員です。
研究者も大学の先生も博士課程での経験が一番活かせる職業ですね。
このように、博士号取得後は大部分の人がその専門性を活かした職業にちゃんと就けていることが分かります。
理系に絞った場合は結果はあまり変わりませんが、文系に絞ってみるとかなり結果は変わります。1番多いのは大学教員で約6割も占めています。2位が研究者なのは同じで、3位は高校の先生でした。
人生終了しないために
では、博士課程に進学しても人生終了しないためにできることは何でしょうか?
上記統計情報を参考にすると、正社員になる確率を上げたいのなら薬学、医学、工学系の博士を目指すのがおススメです。
就職さえできれば基本的に専門性を活かした職には就けるのでご安心ください(笑)。
ただ筆者の意見では、統計情報を判断の拠り所にするよりも、自分が博士課程でどれだけ頑張るかの方が大事だと思いますよ。
理系なら6割は正社員になれるので、その6割に入れるように博士課程で自己研鑽すればいいのです。
また、大学や研究室のレベルごとに分けると正社員率の結果は大きく異なるのではないかと考えています。
実際、筆者は正社員ですが記事に紹介したような正社員率の高い学科出身ではありません。
筆者だけでなく周りのドクターでも職に困るような学生は見たことがありません。
良い研究環境を選ぶことの影響も大きいのではないかと思いますよ。
統計情報はあくまで参考までに知っておくだけにしておきましょう。結局は優秀な博士課程の学生になれば、就活は問題ないのですから。博士課程の数年間を有意義に過ごし、自分の価値を高めることに集中しましょう。具体的にやるべきことは過去記事博士課程進学者の就活は不利か?【経験者が話します】を参照してください。
まとめ
いかがでしたでしょうか?本記事をまとめると下図のようになります。
統計的には修士に比べて博士は就活が不利ですが、人生終了になるかどうかは自分の行動次第だと思います。
ですので、統計情報を言い訳にして博士課程を断念するのはもったいないと思いますよ。
自分がどんな人生を歩みたいかの方がもっと大切です。
自分が築きたいキャリアにおいて博士号取得が意味のあるものであれば、それが博士課程に進学する十分な理由ではないでしょうか?
一度きりの人生ですから、進路は慎重に判断し、悔いのないようにしましょう。
以上、参考になれば幸いです。
コメント