こんにちわ。sakuranokiiです。
博士課程の支援について徹底解説第4弾は「リサーチアシスタント(RA)」について解説します。
リサーチアシスタントはティーチングアシスタントと同様に、代表的な博士課程学生の経済的支援制度です。
RAは修士課程の学生にはあまり馴染みがないと思いますが、博士課程学生は多くの方がお世話になる制度です。
博士課程の学生および進学予定の学生はRAについて知っておかないと後々困りますよ。
本記事では、博士課程経験者の筆者が実体験と調査結果をもとに、リサーチアシスタントの概要および具体的な仕事内容や給料について解説します。
さらに、2021年度から始まるリサーチアシスタントに関する文部科学省の新たな取組についてもご紹介いたします。
経済的理由で博士課程に進学するか悩んでいる学生の方には、ぜひ読んでほしいですね。
・【文部科学省からの支援編】*特別研究員やリーディング大学院などを解説
・【文部科学省の新たな支援編】*新規インターンシップ制度の解説
・【民間・企業団体からの支援編】*多くの学生が応募可能な奨学金の一覧
リサーチアシスタントの概要
始めにリサーチアシスタントの概要が知りたい!ティーチングアシスタントとの違いは何?
リサーチアシスタントとは下記のような制度です。
大学等が行う研究プロジェクト等に、教育的配慮の下に、大学院生等を研究補助者として参画させ、研究遂行能力の育成、研究体制の充実を図るとともに、これに対する手当の支給により、大学院生の処遇の改善の一助とすることを目的としたもの
引用元:学生への経済的支援の在り方に関する検討会第1回資料「大学生等の経済的支援について」 文部科学省
簡単に言うと、大学院生の研究力向上および経済的支援、そして、研究機関の人材確保を目的に、主に博士課程の学生に研究を手伝ってもらう制度です。
RAとTAは大学院生の育成および経済的支援が目的なのは同じですが、業務内容が違います。
TAの仕事は後輩の教育である一方で、RAの仕事は自分が携わる研究ですね。
また、RAとしての就職先は大きく分けて2種類存在します。
大学の研究室、もしくは、国立研究開発法人(国研)の研究室に雇用されます。
TAと同じく、RAへの募集要項等の応募ガイドラインは大学ごと・国研ごとに異なります。
応募したい方は各大学院研究科のHPから調べる、国研のHPから調べる、指導教員と相談するところから始めましょう。
参考までに、リサーチアシスタントとして働くまでのプロセスの1例をご紹介します。
大学採用のRAは筆者の経験談を例に、国研採用のRAは理化学研究所(理研)を例にしております。
筆者の大学はレアケースで、多くの大学は履歴書提出が必要ですし、採用試験を課す大学も中にはあるのでご注意ください。
一方で、国研の場合は厳正な選考のうえ採用されるのが基本です。
また、国研によってはどの大学研究科からでも応募できるわけではありません。
加えて、国研雇用のRAは特別研究員含む他の経済的支援制度との併用は原則難しいようです(職務専念義務に反する可能性が高いため)。
どちらかと言えば、国研雇用のRAの方が応募のハードルが高い印象ですが、違う環境での研究経験は中々できないため、応募する価値は十分あると思いますよ。
どちらのRAに応募するかは、自分がどんな博士課程を送りたいかをよく考えてから決めましょう。
DCとRAの併用は筆者の研究科ではNGでしたが、DCの研究課題進行に支障が生じなければ併用可能としている大学雇用RAもあります。ただし、日本学術振興会への必要書類提出が条件とのこと。DCとの併用については方針が大学によって異なるみたいですね。DC採用者でRAに応募したい方は大学側と要確認です。
リサーチアシスタントの業務内容と給料
RAは具体的にどんな仕事をするの?給料はいくらぐらい貰えるの?
RAの具体的業務内容について、筆者の実体験および調査結果を元に下記にまとめました。
当大学でのRAは経済的支援の意味合いが強い制度でしたね。
他の大学では、大学主導の研究プロジェクトや共同研究、外部機関からの受託研究の補佐業務など様々な仕事があるようです。
国研での研究テーマは受入先の研究プロジェクトに参画する場合だけでなく、大学での研究課題を持ち込んだり、自分で別のテーマを提案したりと様々なケースがあります。
筆者としては、どうせ違う環境なら大学とは違うテーマの研究にトライした方が良い経験になると思いますね。
また、給料については下記のとおりです。
・大学雇用のRA(筆者の場合):時給1400円で学費相当額(年50万円ほど)が上限
・国研雇用のRA(理研の場合):月給164000円(週5日25時間勤務の場合)
・国研雇用のRA(産総研の場合):時給1900円(月14日勤務で月給約20万円)
大学雇用のRAの給料はTAよりも高いです。
筆者の場合は業務内容にほぼ負担がないので、実質奨学金みたいな存在でしたね。
大学によって業務内容や財源も変わるので給料も変わります。
また、従事時間の制限としては、週20時間未満かつ年200時間以上をルールにしている大学が多いです。
その結果、大学雇用RAの場合は平均して年間50万円ぐらいは支給されます。
一方で、国研の場合はもっと高いですね。
国研雇用RAのうち半数以上の博士課程学生は生活費相当額(180万円以上)の年収を得ています。
厳正な審査をパスして雇用されており、負担もそれなりに大きいためか、給料は高額なのでしょう。
RA応募の際の参考にしてください。
国研を博士課程RAの雇用実績が多い順に3法人並べると、理研、産総研、物質・材料研究機構(NIMS)となり、これらで全体の約85%を占めています。国研でのRA採用に興味がある方は理研・産総研・NIMSが有力な受入先候補ですね。
リサーチアシスタントのメリット・デメリット
リサーチアシスタントのメリットとデメリットは何?
筆者の経験および調査結果を元に、RAのメリット・デメリットを下記にまとめました。
・給料が良く、(国立大なら)学費支払いに困らなくなる
・研究者としての視野が広がる
・優秀な研究者との人脈ができる
・社会貢献度の高い研究に従事できる
・最先端技術を学べる
・職歴として就活のアピールポイントになる
・ストイックな国研での研究活動は合わない人もいる
・本業の研究の時間が取られる
やはりRAは給料が良く、国立大なら学費の支払いに困ることはなくなるのが主なメリットです。
国研に採用されれば生活費も賄えるほど給料が頂ける場合もあります。
また、研究室というのは場所が違えば研究への姿勢、文化、設備と何もかもが違います。
他の研究機関に従事した経験や学んだノウハウは、研究者としての視野を広げるために多いに役立ちますよ。
一方で、受入研究室の文化が自分の価値観に合わないリスクもあります。
ストイックな研究室生活を強要されるのは、望まない学生にとってはデメリットと言えます。
受入先の研究室へ事前に見学に行くなど、研究室の雰囲気はできるだけ調べておきましょう。
RAは普通にアルバイトするよりもずっとスキルを活かせるし勉強にもなります。
お金に困っている博士課程学生にぴったりの制度だと思いますよ。
個人的には人脈が広がることも大きいメリットかと思います。研究室生活は人間関係が閉鎖的で息がつまりがちなので、異なる環境の方と繋がれるのは新鮮で良い刺激になります。自分のキャリアを考える上でもバックグラウンドの違う先輩研究者の話を聞くのは参考になりますよ。
リサーチアシスタントに関する文部科学省の新たな取組
文部科学省がリサーチアシスタントに関する新たな取組を開始するって本当?
令和2年1月総合科学技術・イノベーション会議で制定された「研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ」によると、研究力強化のために博士課程の魅力向上が重要な取組として位置づけられました。
その具体的施策として、「国研における博士課程学生のRA採用の促進」が2021年度からスタートします。
狙いは博士課程の処遇を改善することです。
優秀な学生が経済的理由で博士課程進学を断念することを文部科学省は懸念しているようですね。
残念ながら、応募方法や募集条件等の詳細はまだ決まっていません。
現状での国研におけるRA採用についての調査が実施されたぐらいです。
博士課程の方は新たな取組に乗り遅れないように、今後の政府の動向に注目ですよ。
最新情報を追うなら内閣府のHPをお気に入りに登録しておきましょう。
優秀な博士課程学生はもはや授業料を払って教育を受けるだけの学生でなく、大学の研究力強化を担う重要な研究者とも言えます。優秀な学生が研究に専念できるだけの十分な経済的支援を行う上で、RAの充実化は重要な施策だと思いますね。
まとめ
いかがでしたでしょうか?本記事をまとめると下図のようになります。
RAは教育的にも経済的にも博士課程学生にとってメリットの多い制度です。
特に経済的支援はTAよりも充実しており、お金のない学生にとっては非常に有り難いです。
RA制度含め経済的支援制度を存分に活用すれば、少なくとも学費の支払いに困ることはなくなります。
今後新しい支援制度も始まりますので、経済的理由で博士課程を断念するのはもったいないと筆者は思います。
1度きりの人生なので、進路は妥協せずに、自分の気持ちに正直に決めたほうが良いですよ。
以上、ご参考になれば幸いです。
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