こんにちわ。sakuranokiiです。
博士課程の方にとって非常に重要なニュースが先週報道されました。
文部科学省が始める博士課程の新たな経済的支援制度の1つである「次世代研究者挑戦的研究プログラム」に採択された大学が決定したとのことです。
以前過去記事でも解説しましたが、本制度は博士課程学生に年間220~290万円の生活費および研究費を最大3年間支給するうえに、学生のキャリア開発・育成コンテンツも提供するという学振以上に充実した奨学金制度です。
奨学金受給の目途が立っていない博士課程の方なら応募しない手はありませんね。
ここまで読んで、応募したいと思った博士課程の方はこんな疑問をお持ちではないでしょうか?

採択された大学はどこ?
いつまでに応募すればいいの?
どんな試験をパスすれば奨学金を受けられるの?
本記事ではこれらの疑問にお答えしながら、本制度の今後の動向についても解説します。
というわけで、本記事の内容は下記です。
●テーマ
次世代研究者挑戦的研究プログラムに採択された大学と今後学生がやるべきことを解説
●主旨
経済的不安を抱える博士課程の方が新たな支援制度に乗り遅れず応募して奨学金を勝ち取ってほしい
●読んでほしい人
博士課程の学生、博士課程への進学を考えている大学生
次世代研究者挑戦的研究プログラムとは?


そもそも次世代研究者挑戦的研究プログラムってどんな制度?
聞いたことがある方も多いと思いますが、政府は10兆円規模の大学支援投資ファンドを創設し、その資産運用益を安定した研究用財源として利用しようと考えています。
博士課程への支援も当該ファンドの運用益が将来的に担うことになります。
しかし、投資ファンドが軌道に乗るまで時間がかかるので、まずは博士課程学生支援の抜本的な拡充を目指した新制度が令和3年度からスタートしています。
その本年度から始まる博士課程支援制度の1つが「次世代研究者挑戦的研究プログラム」です。
当該プログラムの概要について下記にまとめました。
●背景
・博士課程学生は日本の科学技術・イノベーションの将来を担う存在
・しかし近年、経済的理由・将来への不安等の理由で博士課程への進学者数は減少傾向
●事業内容
・既存の枠組みにとらわれない自由で挑戦的・融合的な研究を実施する優秀な博士課程学生の経済的支援および就職支援を行う大学を支援する
・採用された大学に学生への支援に必要な経費の4分の3をJSTが支給
・1学生あたり年間最大約70万円も支給し、大学の事業統括は個別に支援内容を調整する
・研究分野の指定はないが、各大学1件(事業統括1名)のみ申請可能
●学生への支援内容
・年間220~290万円の生活費および研究費の支給(例:生活費月20万円+研究費年50万円)を最大3年間支給
・キャリア開発・育成コンテンツの提供(例: 企業インターシップや短期留学など )
●応募可能学生
・博士課程1~3年生
・すでに生活費相当額の収入がある学生(学振特別研究員など)は応募不可
●学生の選考方法
・各大学が独自設定
●採用学生の義務
・当事業に採用された学生の交流会への参加、JSTからの直接の意見聴取、研究倫理教育に関するプログラム受講など
●支援予定人数
・約6000人の博士課程1~3年生を支援予定
令和3年度から始まる新制度は合計約7800人の博士課程学生を支援予定です。
次世代研究者挑戦的研究プログラムはその約8割に相当する学生を支援する制度で、新制度の中核を担うプログラムですね。

そのほかの新制度や10兆円規模大学投資ファンドについてもっと知りたい方は過去記事「知らなきゃ損!文部科学省が始める博士課程の新たな経済的支援制度まとめ」をご覧ください。経済的な理由で進学するか迷っている大学院生の方は必見ですよ。
採択された大学と人数一覧


次世代研究者挑戦的研究プログラムに採択された大学ってどこ?
各大学で何人ぐらい応募できるの?
次世代研究者挑戦的研究プログラムに採択された大学および人数が先週9/7に発表されました。
採用大学と人数の一覧は下記です(採用人数の多い順に並べています)。
採用大学名 | 採用人数 |
---|---|
東京大学 | 600 |
京都大学 | 515 |
東北大学 | 511 |
北海道大学 | 467 |
大阪大学 | 420 |
筑波大学 | 351 |
九州大学 | 349 |
名古屋大学/岐阜大学 | 320 |
慶應義塾大学 | 263 |
広島大学 | 199 |
東京工業大学 | 187 |
早稲田大学 | 180 |
千葉大学 | 150 |
金沢大学 | 120 |
東京医科歯科大学 | 120 |
東京農工大学 | 120 |
大阪市立大学/大阪府立大学 | 70 |
熊本大学 | 60 |
新潟大学 | 50 |
立命館大学 | 45 |
山口大学 | 36 |
岡山大学 | 30 |
同志社大学 | 30 |
北陸先端科学技術大学院大学 | 30 |
電気通信大学 | 24 |
徳島大学 | 24 |
名古屋市立大学 | 20 |
京都工芸繊維大学 | 18 |
東京薬科大学 | 18 |
三重大学 | 16 |
青山学院大学 | 15 |
東京農業大学 | 15 |
奈良女子大学 | 14 |
名古屋工業大学 | 12 |
山梨大学 | 11 |
総合研究大学院大学 | 10 |
東京都市大学 | 10 |
宮崎大学 | 10 |
甲南大学 | 5 |
奈良先端科学技術大学院大学 | 5 |
事業統括者やプログラムの名称はこちらのプレスリリース資料をご参照ください。
全国40大学から計5450名の博士課程学生が手厚い支援を受けられることになりました。
自分の大学が採用されているか要チェックですよ。

旧帝大を始めとした有名大であるほど採用人数がやはり多い傾向にありますね。博士課程への進学まで考えるのであれば、研究環境に加え経済的支援を受けやすいという意味でも有名大研究室へ進学した方が良いかと思います。
博士課程の学生がやるべきこと


次世代研究者挑戦的研究プログラムに採用されるために学生がするべきことって何?
自分の所属する大学が次世代研究者挑戦的研究プログラムにめでたく採択されていれば、博士課程学生はぜひ応募するべきです。
応募するにあたって気になるのは「応募締切」と「試験の内容」ですよね。
これらについて、いち早く募集要項が公開されている九州大学と筑波大学を例に見ていきましょう。
●プロジェクト題目
「学問分野の壁を超えて多様な人材と共創できるトランスボーダー型価値創造人材育成プロジェクト」
●学生への支援内容
・特に優秀な学生(25%程度):生活費相当額240万円+研究費50万円
・その他優秀な学生(75%程度):生活費相当額222万円+研究費50万円
・2021年10月から2022年3月まで支給
・来年度も受給するには再申請が必要で最大3年間(医学課程は4年間)受給可能
●応募可能学生
・博士課程1~3年生
・すでに生活費相当額の収入がある学生(学振特別研究員など)は応募不可
●学生の選考方法
・研究計画書に基づく書面審査
・SDGsへの貢献または長期的な人類社会への貢献を重視
●応募締切
・2021年9月30日まで
●採用学生に求める要素
・多様なキャリアパス開拓への意欲
・SDGsに貢献する研究等の実施を通じ主体的・独創的・学際的な教育研究に励むこと
・企業等での接点や活躍の機会を増やすこと(企業での長期インターンシップ、企業関係者や博士課程学生との交流会への参加、海外留学など)
●プロジェクト題目
「未来を拓く博士人材育成のためのオープンプラットフォーム型教育システムの構築」
●学生への支援内容
・生活費月20万円+研究費最大年50万円
・2021年10月より支給開始し標準修業年限内まで支給(D1なら最長で2年半)
●応募可能学生
・博士課程1~3年生
・すでに生活費相当額の収入がある学生(学振特別研究員など)は応募不可
●学生の選考方法
・申請書類に基づく書面審査+面接審査
・申請書が専門外にも分かるように記載されており、優れた着想・オリジナリティ・今後の展望が伺える内容であることを重視
・研究遂行力の自己分析をふまえ具体的な融合研究のアイデアを考えているかを重視
●応募締切
・2021年9月13日~9月30日まで
●採用学生に求めること
・特別授業の積極的な受講(リサーチプロポーザルや短期留学、インターンシップなど)
・自らの能力と可能性を高めようとする意欲を有すること
上記2校の募集要項を見たところ、まずは9月末までに申請書類の提出を行い応募する必要がありそうですね。
まだほとんどの大学で募集要項は公開されていませんが、近日中にはリリースされると思いますので自分の大学研究科HPを要チェックです。

奨学金を勝ち取れるかどうかは面接の出来で決まることが多いです。面接に自信がない方は過去記事博士課程の奨学金を徹底解説【面接対策編】を参考にしてください。高倍率の奨学金を勝ち取った筆者のノウハウを詰め込んだ記事です。
今度の動向


次世代研究者挑戦的研究プログラムの今後の動向はどうなの?
最後に次世代研究者挑戦的研究プログラムの今後注目すべき動きについてご紹介します。
実は当該プログラムはA日程とB日程の2回に分けて採用大学を決めます。
今回採択された大学はA日程での審査結果です。
つまり、B日程で採択される大学がまだあるのです。
当該プログラムは最大6000人を採用するとのことなので、B日程でもまだ500人以上の採用枠があります。
今回残念ながら自分の大学が採択されなかった方もまだチャンスが残っていますよ。
B日程の審査結果は10月下旬ごろに発表されますので要チェックですね。

奨学金を獲得するには情報をたくさん仕入れて機会損失しないことが非常に大切です。そのためにはできるだけ早く博士課程進学を決めて動き出すことが肝要です。様々な理由で進学に悩む方がいると思いますが、過去記事博士課程進学に向いている人・博士課程進学者の就職は不利か?・奨学金に落ちたら読む記事は各方面の悩みに対応していますので参考にしてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか?本記事の内容をまとめると下記のとおりです。
●次世代研究者挑戦的研究プログラムは令和3年度から始まる新たな博士課程支援制度の1つ
●全国40大学から計5450名の博士課程学生が手厚い支援を受けられることが決まった
●応募締め切りは9月末、選考方法は書面審査や面接(筑波大・九州大の場合)
●各大学で近日中には募集要項が公開されるはずなので自分の大学HPを要チェック
●自分の大学が採択されなかった方もB日程での採用がまだ残っているので諦めないでほしい
次世代研究者挑戦的研究プログラムに応募できる方は乗り遅れる前にすぐに行動を開始し必ず応募しましょう。
冒頭でも述べましたが、本プログラムは非常に手厚い支援が受けられる素晴らしい奨学金制度だと思います。
また、できたばかりの奨学金制度は知らない人もいるので穴場になりやすいです。
まだ奨学金受給の目途が立っていない博士課程の方なら応募しない手はありません。
奨学金を勝ち取って充実した博士課程生活を送りませんか?
以上、ご参考になれば幸いです。
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